2006年12月27日

【書評】『「靖国」という問題』(高橋哲哉・田中尚伸共著)

東大の高橋哲哉先生は、『靖国問題』(ちくま新書)というベストセラーによってたいへん著名になりましたが、憲法・教育基本法、思想・良心・信条の問題にもたいへん精力的にかかわっておられます。憲法問題に関しては、いずれ靖国のことや天皇のこともかかわってくるでしょう。これについて語ることには独特の圧力がかかるものですが、ある意味命がけで語っておられる高橋先生に聞きながら、この問題とどうかかわるかも個人が考えていくべきでしょう。【書評】『「靖国」という問題』高橋哲哉・田中尚伸共著
【PJニュース 12月26日】− 12月23日付共同通信電子版によれば、天皇は73歳の誕生日にあたり、戦没者の追悼の重要性を強調したが、議論になっている靖国参拝については明言を避けたという。流行歌「九段の母」が巷に流れたのは昭和14(1939)年で、当時の流行語のひとつが「靖国の母」であった。戦後になってもこの歌を耳にした。私の母なども口ずさんでいたと記憶する。
 
 靖国問題というのは、理屈とは別次元で我われの記憶の深層にわだかまっている気がする。小泉前首相が靖国参拝を繰り返したので、世間の耳目をひいたが、特に『日本経済新聞』の「富田メモ」に関するスクープ(「A級戦犯 靖国合祀」「昭和天皇が不快感」、06年7月20日付朝刊)の波紋は大きかった。

 本書の著者、田中伸尚氏は「重大なのは、メディア全体が、『袞竜(こんりょう)の袖』に隠れて問題を解決する手法、つまりかつての「天皇の時代」のように天皇の権威で、首相の参拝を思い止まらせようとしているかのごとく報道しているところです」と警告している(8ページ)。「『富田メモ』の内容については、昭和天皇の戦争責任の問題を改めて問い直す文脈で捉えることのほうがはるかに重要だと思います。社会意識の形成に大きな影響力を持っているメディアには、それが全く見られない」と、視点の転換を求めている(9ページ)。

 本書で高橋哲哉氏は、自民党憲法改正案との関連で、次のように述べている。「憲法の第20条3項「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない」、さらに89条「公の財産の支出又は利用の制限」に規定された政教分離原則を、2005年11月に自民党が出した新憲法草案ではそっくり変えようとしています」。

 つまり、社会的儀礼、習俗的行為を超えなければよいとしているのだが、高橋氏はこの点を次のように述べている。「この社会的儀礼、習俗的行為というのは、実際にはかつての国家神道のような国家と連動した神社の形ですよね。一応、政教分離を維持するとはいいながら、例外として社会的儀礼、習俗的行為を認める。ところがそうすれば、国家と神社の癒着が復活するわけです」と警告している(13〜14ページ)。

本書の構成は、第1章 靖国問題の本質(高橋・田中)、第2章 返せこの手に/還我祖霊(田中)、第3章 最も危険なシナリオ/軍と国営靖国神社の復活に反対する(高橋)となっている。今後、憲法論議の中で、「靖国問題」は繰り返し登場することであろう。本書はこの問題について考察する際、欠かせない一書であると思い紹介する。【了】

■関連情報
高橋哲哉・田中尚伸共著『「靖国」という問題』株式会社金曜日、2006年10月、700円+税
 
 
posted by みつのぶ at 22:39| 東京 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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