2006年12月20日

公述人・参考人らが記者会見(JANJANより)

今、西原博史先生(早稲田大)の『学校が「愛国心」を教えるとき』(日本評論社)を読んでいるのですが、思想・良心・信条の自由とはいかなるものなのか、明快かつスリリングに述べられていて、すばらしいと思います。ですので、前に送ったメールを採録させていただきます。 
 
…公聴人の方々による緊急署名は、結局18084人集まったそうですね。これが多いと言えるのかどうかわからないけれど、秒単位の増加には驚き力づけられました。署名提出とともに行われた記者会見のようすをていねいに報告している記事をみかけたので、長いですが、下に転載させていただきます。理性的な共感が広がりつつあるところで、野蛮きわまる強行採決が行われたのはたいへん残念でした。 
ともかく署名を提起された、スマートでヒューマンな先生方の言い分を吟味してみることがこれからの力にはなると思います。わたしが知ってるかぎりでは、この先生たちの読みやすい文献は次のようなものでしょうか:高橋哲也他、『教育基本法「改正」に抗して』(岩波ブックレットNo.626)、西原博史『教育基本法「改正」−私たちは何を選択するのか』(岩波ブックレットNo.615)、同『良心の自由と子どもたち』(岩波新書993)、同『学校が「愛国心」を教えるとき』(日本評論社)、広田照幸『《愛国心》のゆくえ』(世織書房)、大内裕和『教育基本法改正批判−新自由主義・国家主義を越えて』(白澤社・発売:現代書館)、大内裕和・高橋哲也共著『教育基本法「改正」を問う』(白澤社・発売:現代書館)。 

  
前置き長くなりましたが、以下が本題のニュースです。 
★「教育基本法案の徹底審議を求めます」〜公述人・参考人らが記者会見(JANJAN) 
 いま参議院で審議されている教育基本法改正案について、与党は、14日委員会採決、15日本会議採決・成立を目指しているとされています。しかし、衆議院及び参議院の教育基本法に関する特別委員会において、参考人、地方及び中央公聴会で公述人として意見を述べてきた大学教授たちは、政府案について多くの問題点を指摘する意見を述べたにもかかわらず、それらについてほとんど議論されていないと述べ、このまま採決成立させることは日本の将来にとって取り返しのつかない事態をもたらすことは明らかであるとし、12月12日(火)10時半より参議院議員会館で記者会見を行いました。 
 出席者は、尾木直樹さん(評論家・法政大学教授、参考人)、高橋哲哉さん(東京大学教授、公述人)、西原博史さん(早稲田大学教授、公述人)、広田照幸さん(日本大学教授、公述人)、藤田英典さん(国際基督教大教授、参考人)、堀尾輝久さん(東京大学名誉教授、参考人)、世取山洋介さん(新潟大学助教授、参考人)の7名の方々です。 
 まず、藤田英典さんは、「さまざまな法案の審議の中で、国会の公述人、参考人として意見表明をした人間が、このような形で審議のあり方、その内容についてアピールを出さなければならない事態はきわめて異常なこと」と述べながら、それほど今回の教育基本法に関する政府与党の法案及び国会における審議は重大な問題をはらんでいると指摘しました。充分な審議を行わず、それで立法府としての責任が果たせるのか、と疑問を呈しながら、仮に政府の法案が成立すれば、日本の教育の将来、ひいては日本の社会の将来に非常に大きな禍根を残し、さまざまな歪みがさらに増幅されていく危険性が強いとの見方を示しました。 
 藤田さんは昨年末、脳梗塞になり、右半分の景色が見えないそうです。それがすべての原因ではないとしながらも、昨年は地方教育審議会の特別部会で年間45回の会議があり、そのほとんど全部に出席したそうです。そのほか国民会議などいくつかの政府審議会に参加し、そのたびにイライラし、腹立たしい思いをしたそうです。藤田さんは、国会における審議を見て、このようなことではそれぞれの政策担当者・立案者、立法府の責任を充分に果たしたことにはならない、と述べ、これは「国民に対する冒涜であり、日本の国の恥でもある」と厳しく批判しました。 
 三十数年間、藤田さんは研究者という立場からこれまで社会的政治的な運動を支援、協力することはあっても、自ら活動をすることはなかったそうです。しかし、そういう研究歴を投げ打っても、今回は何かしなければならないという強い思いで、毎週、数日間、関連の活動に参加しない日はないそうです。 
 この法案にはいくつか重大な問題がある、と藤田さんは指摘します。まず第一に、もしこの法案が成立したら我々はこの法案に誇りを持つことができるだろうか、と問いかけながら「日本の国民、子どもたち、教職員、また、教育について様々な努力を重ね、教育をよくしようと活動してきた人たちが、この法律案を実際に手にしたとき、本当にこれで誇りがもてるだろうか。強い疑問を感じる」と述べました。国の教育の基本的な理念を定める法律が、そのように誇りを持てないものであるとしたら、日本の教育の将来、またそれを支える教職員、子ども、保護者、人々がすべてにおいて非常に大きな問題を将来にわたって抱え込むことになる、と指摘しました。 
 たとえば、与党案の中の第2条には、態度ということにかかわって、国民にああしろこうしろという様々な徳目、道徳規範を教え込んだり押し付けています。家庭教育においては、子どもの精神の健全な発達は保護者の責任だとし、学校教育においては規律を乱すような問題を起こす子は厳罰に処罰するというニュアンスが入っています。教職員、家庭、子ども、人々にどのような人間になれ、どのような行動をしろということを命令するような規範になっている、と藤田さんは指摘します。 
 それに対し、現行の教育基本法は日本の教育の基本的な枠組みとそれを支える理念、それを充実・発展させるために、行政・政府は何をすべきかを書いてあるものです。憲法99条に書いてあるように、憲法も同様の基本構成・基本原理になっており、基本的人権、国民主権、主権在民、を基本にして、政治や行政が何をどのように行わなければならないかが書かれています。その意味で藤田さんは「憲法と教育基本法が戦後60年にわたる日本社会の民主主義的な発展を支える基盤になってきた」と考えを示しています。 
 それが今回の法案では、国民に様々に命令するという要素を組み込み、しかも、学校教育においては様々な徳目についての態度を評価するとしている。国や郷土に対する誇りや愛着を持っていても、学習態度が悪ければ「お前は態度が悪い」と評価される。この法案が学校で実行されたら教育現場に様々な歪みと混乱をもたらす条文がふんだんに盛り込まれている「きわめてひどい法律」との見解を示しました。 
 藤田さんが国会で参考人として意見表明をしたときの印象では、文科省や大臣の答弁は赫々云々の、通り一遍の答えをして終わりだったそうです。法案の各条文と直接関係ないような教育の様々な問題について話し合われており、それで本当に審議をしたといえるのか、と疑問を呈しながら、審議がきわめて不十分であるとして強い不満を抱いたそうです。 
 藤田さんは授業などで学生にこの問題を話すことがあるそうです。ほとんどの学生が「(一連の教基法「改正」案の問題を)知らない」と答えるそうで、学生でさえそうなのだから、一般の国民はどこまで理解しているのか、あるいは、賛成・反対の意思表示をするような充分な根拠を持っているのか、と疑問を投げかけました。世論調査の結果をみても、急いで改定するべきでないという意見が過半数を占めている状況で、いい加減でずさんな審議をして、時間を費やしたからといって採決をしようとする在り方について、「国会のあり方、また政治家の責任というものがこれほど強く問われていることはない」との考えを示しました。 
 その意味でも、参院においては十分な審議が求められていると述べ、必要であれば継続審議(できれば廃案がベスト)とするべきだとの見解を示しました。マスコミに対しては、これまでの報道は十分ではなかったとしながら、事柄の重要性を踏まえ、新聞、テレビ等もきちんと報道してほしいと訴えました。 
 西原博史さんは今回のアピールの内容について説明しました。西原さんは、衆議院の公聴会で、政府案と民主党案がまったく違う内容であるにもかかわらず、同じだと思っている与党議員が多かったことに触れ、審議をしている議員自身が法案の中身について知らないことを明らかにしました。衆院の公聴会に出た日の午後、与党だけで強行採決を行ったことに対し、西原さんは強い憤りを感じたそうです。 
 今回のアピールの内容について西原さんは、現行法と改正案の違いを明らかにしながら、その問題点について説明しました。まず、現行法は国家権力を制限することで、子どもたちを守り、国家が子どもたちの心をもて遊ばないようにしています。しかし、与党案はまったく違います。政府のために子どもたちに命令するための枠組みと予防措置が組み込まれており、問題点があるにもかかわらず、充分な審議がされないまま、与党は今国会での成立を目指しています。西原さんは、「もっと時間をかけて徹底的に審議をするべきだ」と述べながら、何が不十分か、その内容について詳しく説明しました。 
 まず、1点目は、なぜいま全面改正をするのか、その理由が明らかにされていないことです。また、現行の教育基本法がGHQによる押し付けといった誤った認識が払拭されていないことにも言及しました。 
 2点目は、政府案のように改定したら教育がどうなるのか、いじめが減るのか、いま学校現場で起こっている諸問題が政府案で解決するのか、また、現行の教育基本法ではなぜ解決できないと考えているのか、それらのことが明らかにされていこととしました。 
 3点目は、教育の階層化が進むことです。教育における勝ち組・負け組を作ることで、分断がもっと強まる。そうすると子どもたちがバラバラになってしまうので、愛国心を植え付け、子どもたちを束ねる。子どもたちの成長発達を見守ることなく、共通テストをさせることで競争主義が今以上に進む不安があります。 
 現行の教育基本法は、教育の基本的な理念・原則・枠組みと、政治・行政の責務を規定したものです。その特徴は、憲法第99条と同様、国家権力・行政権力を拘束する規範になっています。それに対して政府案は、子ども・家庭(保護者)・大学などに命令する規範が目立つものとなっており、これが4点目の問題です。政府はこのような重大な変更を行う場合、正当な理由を説明する責任があります。立法府はその是非を充分に審議検討する責務があります。 
 5点目は、教育基本法のような理念法、教育の根本法規に「教育の目標」を規定すれば、その達成度の評価を通じて、教育の独自性・自主性や個人の内心の自由が侵害される危険があることです。「目標」には「愛国心」をはじめ20を超える徳目が盛り込まれていますが、国が上から一方的に押し付け、国が考える愛国心を子どもたちに強要することは、現代の社会で許されるものではありません。 
 6点目は、政府案は現行法10条1項の「教育は不当な支配に服することなく」という規定を残していますが、現行法の「(教育は)国民全体に対し直接責任を負って行なわれる」の文言を削除し、「(教育は)この法律及び他の法律の定めるところによって行われる」という規定に変えた政府案では、国会で多数決で決めれば政府がどんなことでもできるようになってしまうことです。これは、国家・政府による教育への介入を無制限に許すことにつながります。 
 7点目は、政府案は憲法に違反するのではないかと危惧する内容を多々含んでいることです。憲法との関係、子どもの権利条約との関係について、各条文の検証が必要です。とくに政府は法案16条の1項について76年の最高裁学テ判決を援用していますが、その援用が最高裁学テ判決として誤っているばかりか、その判決に照らしても違憲と判断される内容になっています。 
 8点目は、政府案第13条の「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚する」というのは、具体的に何を意味するのか不明だということです。 
 西原さんは「政府が望むよう形で子育てをするから、まわりの国民は全部協力しろという話なら、単に教育基本法ではなく、国民の精神を改造するための法律であるようにすら見えてくる」と述べ、そうしたことにともなう問題がまったく明らかになっていない以上、問題の構造を明らかにし、問題があえばそれに対して予防措置をとった上でなければ先に進むことは許されない、と拙速な採決はするべきではないとの考えを示しました。また、国民にまだ知らされていない重要な部分が含まれているのではないか、と疑問を呈しながら、このような重要なことが国民にまだ充分広がっていないのは、「我々の努力の足りない部分もある」としながら、「報道各社のみなさんの協力を得て広めていきたい」と述べ、マスコミの協力を求めました。 
 つぎに、それぞれの出席者から発言がありました。 
 世取山洋介さんは、「我々の主張が正しくても国民に指示されないと力を持ち得ない」と述べ、インターネットによる署名を行った結果、12月9日14時からインターネットではじめた教育基本法改正案反対の署名が1万1000人の署名が集ったことを明らかにしました。わずか数日でこれほどの著名が集ることはきわめて異例のことだそうです。この署名の持つ意味は重いとしながら、世取山さんは、漠然とみんが「なにかへンなことが起こっている」と感じ、中身がよくわからないことに不安を感じているからではないか、との見方を示しました。 
 国会の答弁で伊吹文科大臣が、この政府案が自民党の新憲法草案に基づいて作られたという趣旨の発言をしていたことに触れ、憲法99条の憲法擁護尊重義務に違反するだけでなく、一政党の憲法試案に基づいて政府案を作ったということであれば、現行の教育基本法の10条が禁止している「不当な支配」にも該当する、との認識を示しました。ヨーロッパでもし根本法である憲法の枠を超えた議論をしてそれに基づいて法律を作ったら、倒閣運動が起こるそうです。それほど大きな問題なのに「日本のマスコミは何をしているのか、一体、このマスコミの鈍さは何なんだろうか。憲法の枠を超えた一政府案の法案がそのまま通るということは、どうみても異常である」と述べ、国民にとって重要なことが起こっているにもかかわらず、そのことを伝えないマスコミの報道姿勢を厳しく批判しました。 
 高橋哲哉さんは、3年前、中央教育審議会から教育基本法の見直しが出たことをキッカケに、このままいくと大変なことになると思い、市民運動に参加し、「教育基本法の改悪を止めよう!全国連絡会」の呼びかけ人の1人になり、活動を続けてきたそうです。高橋さんは、政府案は「問題がある」と述べ、すべてを貫いているのは、国民の教育から国家の教育に変えようとしていること、との見解を示しました。その上で、教育基本法のような質の高い、いい法案が、このような法案の作成過程、国会審議の過程を通して変えられてしまうということの問題点に言及しながら、「このようにして新しい法案を作ろうとしている人たちは、後世に対し、歴史に対し、恥ずかしくないのか」問いかけました。 
 また、現行の教育基本法は敗戦後、教育刷新委員会で日本の知識人が徹底的に議論をして作り上げたものである、と述べ、そのとき議長を務めた南原繁が、1955年に著した「日本の教育改革」をもとに、公聴会のとき公述を行ったそうです。その中では教育基本法をどういう思いで作ったのかが述べられているそうです。当時からアメリカの押し付けによるものであると反論する人たちがいたそうですが、南原繁は、「数十回の議論を通し、アメリカに押し付けられたことは1度もない」とはっき否定したそうです。 
 安倍首相も、憲法とともに教育基本法は占領下の残滓と主張していますが、その議論は50年も前に南原さんによって退けられているのです。その程度のレベルの議論で成立させられようとしていることに疑問を投げかけながら、高橋さんは、南原繁がその著書の最後で述べている、「(教育基本法の)理念、精神は、どんな反動の嵐がこようとも、何人も変えることはできない。なぜならば、それを否定することは歴史の流れをせき止めることになるからだ」という言葉に、当時この法案を作成した人たちが、歴史の前でいかなる批判にも耐えられるという自信と誇りを持っていたと語りました。 
 いま法律を変えようとしている人たちは、やらせタウンミーティング問題などあらゆる問題がふき出て文科省の責任が問われている中、「果たしてそのような自信をもって後世に誇りえるのか、声を大にして言いたい」と厳しく問いかけました。 
 尾木直樹さんは、教育評論家の立場としてこれまで組織や団体にかかわってこなかったそうです。しかし、いまそんなことを言っている余裕はなく、「ギリギリの気持ち」であると述べながら、衆議院の集中審議に参考人として意見陳述をしたときのことを話しました。自民党議員も民主党議員も話がよく通じていたので、うまくいくのかなと思っていたら、政治力学はまったくちがうところで働くことを目の当たりにし、愕然となったそうです。 
 尾木さんはいまの気持ちを「とにかく子どもたちに対して恥ずかしい。こんな教育基本法の改正に立ち会っていた1人の国民として、子どもたちに申し訳ない気持ち」と述べました。なぜこんなにスルスルと、野党欠席のままいってしまうのか。時間だけがやたらと過ぎ100時間を超えたと言っているが、中身がなにも進展していない。マスコミからメリットとデメリットについて聞かれたとき、尾木さんはもしこの法律が成立したら、「北朝鮮と同じ国になる」と答えたそうです。ヨーロッパではアジアに非常に心配な国ができたと思って、おそらくハラハラしているのではないか、と述べました。 
 教育者として長く現場に携わってきた経験から、このような状況になってしまったのは「(教育基本法を)実現してこなかったからではないか。いま起こっている教育委員会などの問題も根っこは同じ。教育基本法を生かせなかった」との認識を示しました。学校現場で教育基本法が実践されてこなかったことが、何かを変えればよくなるのではないかという幻想を国民に抱かせてしまった、と述べ、「しまったなあ。足もとをすくわれてしまった」との感想を抱いているそうです。 
 教育にとって一番大切なことは、「子どもたちに希望があること」だと尾木さんは言います。どんなに苦しくても、希望があれば子どもたちの目は輝きます。しかし、日本という国は、教育基本法の理念にたってもこのような状況であり、ほとんどクーデターまがいの中身と方法で進んでいくことに、子どもたちは絶望しているのではないか、と述べながら、「あとで、そのことを知ったら必ず、怒り、絶望感や虚無感にとらわれるのではないか。そのことに恐ろしさを感じる」と尾木さんは語りました。 
子どもたちは日本を見ていて、物質は豊かであるけど希望がないと思っている、と述べ、「ここでひとふんばりして、やっぱり可能性はあるんだという状況に反転したい」と語りました。 
 子どもたちのいじめ自殺は依然として止まらず、10・11・12月になっても続いているそうです。2学期に入ってからでも十数人が亡くなっているそうです。本当に悲惨な状況になっているにもかかわらず、教育再生会議の提言の中身をみると、基本的に教育基本法が改正されたあとの方向性を先取りしているそうです。たとえばいじめの問題にしても、見て見ぬふりをした子も加害者だとズバッと切り捨てる。しかし、注意をできない自分を責め、ハラハラドキドキして苦しんでいる小学生がどれほどいるか、加害者の子も、自分の行いを恥じ、傷ついている子がどれだけいるか。子どもたち一人ひとりの心にわけいって行くきめ細かさは、「まったくもっていない」と批判しました。 
 加害者の子は出席停止、いじめを是正できなかった教師は戒告処分にするなど、排除の論理になっているが、仮に、指導不足を理由に教師をやめさせたとき、1万人はいなくなる。その1万人をどうやって補充するのか、と疑問を呈しながら、昔とちがい、いまは教師になりたいと希望する人が少なくなり、教育界が激変していると述べ、東京の教育委員会は大阪まで先生を探しに行っていることを明かしました。学校の格差が広がり、入学者ゼロの学校が出ていて、東京だけでも5校あるそうです。さらに格差が広がれば、見捨てられた子どもたちは憂さを晴らすためにもっとひどいいじめがはびこると警鐘を鳴らしながら、「子どもたちに先生を返してほしい。そして、先生の子どもたちを返してほしい」と訴えました。 
 堀尾輝久さんは、6月7日に衆議院特別委員会で参考人として意見を述べたそうです。堀尾さんは日本教育学界の会長をしており、歴代会長4名の見解を述べ、それを支持する、教育学関連の学会22の会長経験者44名が署名運動をはじめ、1100名近くの教育研究者の署名を集めて国会に持って行ったそうです。堀尾さんは専門家の意見を聞くことは大事だと述べ、とくに教育においては専門や現場の教師の意見を聞くことは国際的な常識になっているが、日本の場合は専門家の意見を聞かないことが多い、と不満を述べました。 
 教育哲学や教育思想などが専門の堀尾さんは、10年ごとに教育基本法の意味を論調し、それを批判する動きの論文を書き続けてきたという思いがあり、その意味で、「とうとうことここにいたったか」との思いがあるそうです。堀尾さんによると、これまで教育基本法の危機が3回あったそうです。1回目は、1955年。憲法改正と教育基本法改正は自民党結成以来の悲願でした。2回目は1980年代の中曽根内閣時代。3回目は、1990年代の終わりから20世紀に入ってから。憲法と教育基本法はセットになっており、「本当に危機的な状況になっている」と堀尾さんは現状を分析しています。 
 日本の学問が揺さぶられている、としながら、改正案に即して問題点を2つ挙げました。1つ目は、あたかも部分改正のように見せかけて全面改正していることです。それでは現在の教育基本法はどうなるのか、国会でそれを追求すべきだ、としました。公明党は憲法の理念を残すとしているが、全面改正なら現行法を廃案にしなければならない。そうなると、法解釈はどうなるのか、その点についても追求しなければならない、と述べました。 
 2つ目は、憲法との関係です。憲法の精神に基づくとすれば、この政府案は憲法に違反している、と堀尾さんは指摘します。「不当な支配」を憲法の精神に照らせば、改正が果たしてして成立するのか。2条の関連も、それ自体、憲法の精神に違反する。自由で自立的な空間を教育の場に実現することが憲法の精神であるとすれば、2条は憲法に反している。また、現行の10条が政府案では16条と17条になったが、大きな憲法違反の発動である。憲法に則ってといっているが、16条の「この法律及びその他の法律の定めるところによって」とあるところが教育をしばることになる、と述べ、「憲法に従わなければならない」と断じました。 
 広田照幸さんは、11月15日の衆議院の中央公聴会で公述人を務め、問題点を審議してほしいと言ったその日に単独採決審議があり、「自分の言ったことはなんだったのか」との思いを抱いたそうです。これまでの審議をみると、目の前の問題に時間をとられ、教育基本法改正についてはきちんと審議がなされてこなかった、と広田さんは指摘します。教育の改正はこれから50年、100年先まで及ぶことから、いまの子どもたちが年をとって死んでいくことを考えると、長いタイムスパンの中で教育をきちんと議論しなければならないのに、当面の教育問題の議論はもちろん重要だとしても、法案そのものについての議論がきちんとなされてこなかった、との見解を述べました。 
 改正をするということは、何かを失うことである。プラスとマイナスをきちんと検証し、最善の道は何か、時間をかけて議論をすることが国会議員の叡智であるが、現状では「まったくちがう」と述べ、これからでも遅くないので、気を取り直し、徹底審議をしてほしい、と訴えました。 
 最後に、質疑応答がありました。主な質問は、現行の教育基本法が占領軍の押し付けではないのかということと、政府案の「不当な支配」が何をさすのかということでした。占領軍の押し付けについては、教育基本法を作った南原繁の証言でも明らかなように、「押し付けはなかった」と述べ、教育基本法は南原繁さんなど日本の知識人が中心となって作ったものであることは歴史的事実であると答えました。また、政府案の「不当な支配」が何をさすかという質問に対し、自民党議員の発言などから日教組をさしているのではないか、との見方を示しました。 
 司会の田原さんが、インターネットでの反対署名の人数は、12日8時55分現在で、1万1523人に達したことを伝えました。田原さんはまた、13日(水)に「第4回ヒューマンチェーン」をやるので、1人でも多くの人に参加してほしいと呼びかけました。(筆者注:「第4回ヒューマンチェーン」12月13日(水)午後5時集合・参議院議員会館前。午後5時〜6時まで。問い合わせ先・日本消費者連盟03−5155−4765) 
(ひらのゆきこ) 
 
posted by みつのぶ at 19:09| 東京 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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